ストーリー

「君はここに何年くらい一人で住んでいるんだ」

「わたし? 一年前にお母さんが死んで、それから」

「お母さんは、この家の敷地の中に?」

「うん。わたしが埋めた」

枯れた細木の如くやつれた少女の手足。

指で指し示す気にもなれず、私は家の壁に寄りかかり腕を組んだ。

やせ細った子供。外見だけ見れば栄養失調とも酷似している。

が、そんなものとは一線を画す──

世界的に稀な病が少女を蝕んでいることを私は知っていた。

「良くて十年。最悪なら明日にでも……君は死ぬかもしれない」

なぜか、彼女は学校をよく欠席する。

なぜか、彼女は体育の授業はいつも見学する。

なぜか、彼女はクラスの誰とも話そうとしない。

なぜか、彼女の目つきは異様に鋭い。

……あとの三つは忘れてしまったけれど、

あたしの知る限り「クラスの七不思議」はこんな感じだ。

ありがとう。

そんな一言を言う勇気も出せなかった。

ごめんね、あの時言えなくて。

ずっと前から死ぬことは覚悟していたはずなのに。

彼女に向けて涙を流す力も残ってない。

ただそれだけ、わたしはどうしようもなく悔しかった。